遮熱断熱材の広告への疑問
一つの例として、「アストロホイール」では、屋根面を仮定した実験をしていますが、夏季を想定した実験です。(*アストロホイール全文より)
しかし、真夏の太陽の輻射熱と、冬季の室内暖房の輻射熱量では大きく熱量に差があります。
これら夏季を想定した遮熱実験はどのメーカーもしているのですが、冬季の暖まった室内の暖気がどこまで逃げていかないのか、といった実験はどのメーカーもやっていないにもかかわらず、メーカーによっては四季を通じて効果があると謳っています。
つまり夏季を想定した実験だけで高い効果があるのだと言いつつ、冬季、特に直射日光のでない寒冷地の夜間といった想定の実験はどのメーカーもしていない不自然さがあります。
・宇宙技術というものの??
また、遮熱材のみで大丈夫なのだ、という説明の中に、よく引き合いに出されるのが宇宙服です。
宇宙服は、反射材であるアルミを基材としてわずか1cm程度の断熱材や反射材の層であると言います。でも、宇宙服の絶対条件である『完全な気密性』や、『宇宙空間は真空で対流が全くない』、という特殊な条件には一切触れずに、その優位性だけを強調しようとしている広告もあります。
そういう疑問を持たずに広告を見ていると、
・宇宙でもその原理が使われている ・99%とい高い反射率 ・グラスウール16Kの110mm程度の断熱効果 ・ 発泡ポリスチレンU種75mm相当だ ・エアコンが1台不要だ。 |
.......というメリットが強調されています。
しかし、建築会社の中には、高らかに謳われている性能のある一点の情報だけを鵜呑みにし、誤った断熱方法を用いている事例が散見されます。
いずれもメーカー側のある記述だけを誤解して解釈したために起こっている現象です。
では、どんな勘違い事例があるのか3つのケースを見ていきましょう。
建築会社によっては、この遮熱材だけで断熱が可能だ、と考えている会社があります。それは正しいのでしょうか。1.戸建て住宅、アストロホイールの例
建築知識という建築の専門誌に載っていた広告は、下記のように、あくまでも「遮熱材」であることだけを謳っていますが、ある工務店では、断熱材も設けずに、この遮熱材だけで屋根の断熱は完了だ。といった会社もありました。
何construstionメソッドは、カーテンに使用されます
2.戸建て住宅、リフレテックスの例
アメリカの本家本元のメーカーサイトでは、右のように、 屋根の説明箇所には、エアコンを10%程度低減出来る効果がある。と書かれています。しかし、その様なアメリカ本社の広告を確かめることもなく、あたかも断熱材不要の遮熱断熱材と勘違いをして、この材料だけを断熱材といして使っている工務店がいます。
*リフレテックス社のホームページ
*同、屋根面のページ (右、屋根面の効用の記載ページ)
*リフレテックス社のメーカー資料(英文)(右の図示抜粋資料)
また、外壁部分では、外壁の遮熱材は、室内側に施工され、気密シートと併用するような雰囲気で書かれており、日本の工務店がしているような外壁側に遮熱シートを使っていません。(右、外壁面の図示)
さらに、右のリフレテックスの図では、断熱材があることを前提とした図になっていますが、アストロホイールもリフレテックスもどちらも断熱材など不要だと錯覚している工務店がいます。
3.マンションの遮熱塗装のみの外壁断熱
マンションで結露するという問い合わせをいただき、その建物の図面をよく見ていると、外壁には遮熱塗料が塗られているだけで、断熱材が設けられていませんでした。
上の広告がその塗料ですが、この製品の広告にも、上記図版には載せていませんが、冒頭には「米国航空宇宙局(NASA)で研究開発され、」という書き出しで始まり、0.5mm厚の施工で100mmのスタイロフォームと同じ断熱効果・・・・と書かれています。
これをなんの疑いもなく読めば
・NASAで開発されたんだ。すっげぇ〜。
・0.5mm厚で、スタイロフォーム100mm相当だ。すっげぇ〜。と驚愕してしまいますね。
しかし、その前振りに、『熱反射に関して』という注釈が書かれているのに全く見ていません。熱反射の極めて弱い状態(夜間など)なら、タダの塗装なのですが、そんなことは前のNASAという文字と、スタイロフォーム100mm相当で吹っ飛んでしまっているです。
しかも、熱反射は、空気層があって初めてなし得るのです。右図のように室内側にコンクリートがあれば、熱反射など不可能ですが、そこには気がつかないようです。
そして、このマンションの設計者は、なんの疑いもなく、この塗料の採用に踏み切ったのです。
陥りやすい罠
これら3つの話を聞いていると、少しは疑問を抱かないのか、と思いたくなるような話ですが、これら3つのケースは、断熱というものに対して、全く知識がないか、あるいはむしろ中途半端知識が邪魔をして、ある特定の機能だけを強調した広告にはまってしまったのでしょう。
どのように具体的なデッキを構築する
特に、遮熱材メーカーの多くが書いている『断熱材の○○mm相当』という文句が決め手だったのだと思います。
熱伝導率が厚みに正比例するものであることを知っていれば、なぜ、熱伝導率0.0159kcal/mh℃程度の材料が、厚み0.5mmで、スタイロフォーム100mmと同等なのだ。という疑問を持つのですが、そこまでの知識がないために、なまじっか○○mm相当の広告だけで判断してまったのでしょう。
○○mm相当とは、
実は遮熱材と今までの断熱材では、比較すべき土俵(物差し)が全く異なっています。
遮熱材は、その熱をどれだけカット出来るか。(反射され、引き返していただくか)という性能に対して評価し、今までの断熱材は、その熱の通過をどれだけ妨げられるか。(通るのは仕方ない。ゆっくり通れ)という性能に対して評価していました。
要は熱を制御する手法の違いのため、全く同じ土俵では比較出来ないのです。
後者は、熱貫流率というものがその物差しとなっていますが、前者と後者をつなぐ、共通の物差しがありません。
そのために、これら遮熱材メーカーが言っている○○mmの断熱材相当という表現は、『もし、遮熱材の効果を断熱材に置き換えれば』という前提で説明しているに過ぎ無いのです。
そのために、熱が反射出来るような環境でない場合、つまり、熱放射が極めて少なく、熱反射の効果が期待的出来ないときや、片面が何らかの材料と密着しているなど反射自体が出来ない場合は、この遮熱材は宣伝文句の機能は発揮し得ないのです。
身近な断熱材
魔法瓶と真空
魔法瓶にもアルミではありませんが、反射面として内部に銀が蒸着されています。でも魔法瓶に保温性があるのは、蒸着された銀のせいではなく、真空層があるという瓶の構造にあるのです。
注:リフレテックスはこの原理を応用しているようです。
冷蔵庫と断熱
今までの冷蔵庫の断熱材は硬質ウレタンといわれるもので、その見かけの熱伝導率は0.3程度で建物で使われている硬質ウレタンと系統的には同じ物です。
そして、冷蔵庫の次世代断熱はアルミなどではなく、真空断熱という技術で、今までの硬質ウレタンの10倍の断熱性能があると言われています。
また、自動車である保冷車の断熱材も、厚み50mm前後の硬質ウレタンが中心です。
ペアガラスとアルゴンガス
本来空気層はそれだけでも断熱性能を持っていますが、真空状態はさらに断熱性能が高まります。しかし、製造技術的にペアガラスの内部の絶対真空は出来ないため、アルゴンガスを注入してより高性能なペアガラスとなっています。
・空気の熱伝導率 0.024W/(m.K)
・アルゴンガス 0.0015W/(m.K)
・日本板硝子では、真空ペアガラス「スペーシア」が開発されています。
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材料の熱伝導率
数字が低いほど、熱伝導率が低い。すなわち、熱を通しにくい。
断熱材といわれているものは、すべて熱貫流利率が低い。
アルミは、いろいろな材料の中でもっとも高い熱伝導率となっています。
材料 | 熱伝導率W/(m.K)
|
アルミ | 250 |
コンクリート | 1.6 |
木材 | 0.15 |
ALC | 0.17 |
グラスウール10K | 0.05 |
ロックウール | 0.038 |
スタイロフォーム一種 | 0.04 |
スタイロフォーム三種 | 0.028 |
硬質ウレタンフォーム | 0.029 |
フェノールフォーム | 0.022 |
アルミの特異性
上の数字を見ても分かるように、アルミの熱伝導率は、他の材料を引き離して圧倒的な差があります。
そのため、アルミは、あっという間に暖まり、あっという間に冷める材料だと考えればいいでしょう。
リフレテックスの米国サイト ・屋根面の効用の文面 Radiant Barrier ReflectixR products are an excellent, energy-efficient choice for upgrading your attic system. When installed properly, a reduction of up to 10% in the home's air conditioning usage can result. The products are clean, lightweight and easy to install. Additionally, attic- mounted HVAC ducts benefit from the reduction of attic surface temperatures.
・・・・(訳文)・・・・・ 放射障壁 reflectix Rの優れた製品は、エネルギー効率の高いシステムの屋根裏部屋をアップグレードするために最適です。正しく用いられたときはに、最大で10 %の家庭のエアコンを削減できます。この商品は、きれいで、軽量で、簡単に取付できます。また、屋根裏部屋に取り付けた空調ダクトも表面温度の低減という恩恵を受けられます。 注:筆者は英文が不得手なため、Googieの英訳サイトと、gooの英訳サイトを併用して訳文しています。多少の意訳間違いがあるかも知れませんが、ご了承ください。 また、屋根や外壁面の断熱材がある状態で図示されており、断留津材が不要とは書かれていない。 ・屋根面の図示
・外壁面の図示 図示では、石膏ボード側、つまり、室内側に遮熱材を張っているように図示されている。
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■施工ポイント
反射側に空気層が必要
遮熱材の反射側には、15mm以上の空気層が必ず必要です。特に通気層を取れば、よりその効果が高くなりますし、タイベックシルバーでは通気層を必須条件としています。(他社メーカーは曖昧。静止空気層でも可としている)
遮熱層で反射され、遮熱層と屋根下地の間で暑くなった空気は、通気層を通じて流れ出ていく。 静止空気層でも良い、とする考えのメーカーもあるが、それは静止空気層の熱貫流率が低いための、その効果を期待するものだが、施工上静止空気層など作れないため、メーカーが静止空気層といってもそれは机上だけのことで、実質的には暑い空気の溜まり場になってしまう。 そういう意味で、通気層は設けるべき。
室内側気密シートは使えない
また、日本のように遮熱材を外壁側に使う場合は、下図のA図のように、室内側の気密層と、遮熱層の2つが湿気を遮断する層になってしまうため、室内側に気密シートは使えない。そのためグラスウール、ロックウールではなく、B図のような発泡系断熱材(スタイロフォームや発泡ウレタン)を使う事が望ましい。
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